SKAの先行機と開拓機
(訳注)SKA機構は試験機をPrecursorとPathfinderとに区別していますが、これらの正式な和訳は定まっていません。本稿では便宜上、Precursorを先行機、Pathfinderを開拓機と訳し、区別しない場合は単に試験機と訳します。
SKA先行機
南アフリカのMeerKAT、マーチソン広視野アレイMWA、そしてCSIROのオーストラリアSKA試験機ASKAPような先行型望遠鏡は、向こう10年を越えてSKAの主望遠鏡の設計に役立つ計り知れないほどの有益な知見をSKAの科学者に提供しています。

マーチソン広視野アレイ
左の写真に示すMWAは、科学的そして技術的な点からSKAに貢献している多くの望遠鏡の一つです。
将来のSKA建設地に設置されつつ、これらの先行機は将来のSKAの取り組みに関係する科学的な研究の実行と、SKAに決定的な新技術の開発・テストの助けを行い、そして将来も行っていくでしょう。
南アフリカのカルー地域に今姿を現し始めているMeerKATは、それ単独で世界規模の電波望遠鏡群になるでしょう。そしてMeerKATは2020 年代初頭にSKAが稼働しだすのに先行して、革新的な科学研究を行えるよう設計されています。SKA が登場するまでは、MeerKATは南半球で最大かつ最高感度の電波望遠鏡になるでしょう。MeerKAT自体も主たるSKA群の一部をなす予定です。
オーストラリアのASKAPも、オーストラリアが同じくSKAの一部として主催する予定の低周波広視野アンテナ(SKA LOW)の広大な区画の展開に先んじて、最先端の科学研究を実行しています。ASKAPを構成する36台のアンテナは既に西オーストラリアのマーチソン電波観測所(MRO)に建設されています。
ASKSPには現在、SKAに適用される予定の多くのコンセプトの試験をするためにデザインされた精密な電子機器が搭載され始めています。試験運用が完了すれば、ASKAPは最初の科学観測を開始し未来を先見するような世界レベルの科学をもたらすでしょう。
ASKAPとMeerKATは共に、近い将来に動き出す完全なSKAシステムに先んじて運用されています。MeerKATは SKA第一期に統合される予定です。そしてユニークな科学達成性と成果を創りだしていくでしょう。
SKA開拓機
世界中に点在する開拓的な望遠鏡とシステムも関連した技術と科学研究としてSKAに関わっています。それらには、ジェームズ・ボンド映画「ゴールデンアイ」で注目を浴びた、かの有名なプエルトリコのアレシボ天文台や、ヨーロッパの 低周波アレイLOFAR、「コンタクト」など多くの映画に登場する北アメリカの EVLA もあります。以下がSKA開拓機のリストです。
- APERture Tile In Focus (APERTIF)
- Arecibo Observatory
- Allen Telescope Array (ATA)
- electronic European VLBI Network (eEVN)
- Electronic MultiBeam Radio Astronomy ConcEpt (EMBRACE)
- e-MERLIN
- Expanded Very Large Array (EVLA)
- Giant Metrewave Radio Telescope (GMRT)
- Low Frequency Array (LOFAR)
- Long Wavelength Array (LWA)
- NenuFAR
- SKA Molonglo Prototype (SKAMP)
試験機としての指定の申請
2008年、SKA の科学技術検討委員会(SSEC)は「SKA試験機」を自称する望遠鏡が急激に増えていくのを目の当たりにし、SKAのブランド名を守るために、「SKA 試験機」となる何かの定義が必要であることを認識しました。そこで次のような呼称が作られました。
Precursor 先行機: 2つのSKA用地のどちらかにある望遠鏡
Pathfinder 開拓機: SKAに関連した技術や科学、そして運用を行う望遠鏡
これらの呼称の使用許可を申請するには、技術、科学、運用の分野において、「SKAへの貢献」は以下に示す基準のいずれかを満たさなければなりません。
- 大きな望遠鏡において試されたことのない新しい技術要素を持ち、かつそれが SKA ベースラインデザインの一端であること(技術分野)
- フル SKA と同等または拡張可能なレベルの感度やダイナミックレンジの新しい可能性を調査する試験観測を、シミュレーションあるいは実観測に関らず実施する予定があること(科学分野)
- SKAに必要とされるのと同等または拡張可能な観測スケジュール調整や観測時間割り当ての方法を試験的に実施していること(運用分野)
SKA と関連した名称の使用申請は SKA 機構長宛てに行い、その申請には次のような事項を提示する必要があります。(1) 国際SKAプロジェクトに至る活動について、その成果を得るための明確で具体的な道筋 (2) 申請者たる研究施設の名称と、主要連絡先の電子メールアドレス。当該施設が SKA という名称を獲得するには、得られた成果について継続的に SKA 機構と連絡しあう仕組みがなければなりません。機構長が何をPrecursorやPathfinderと指定するか専決します。SKA先行機や開拓機についてより詳細な情報は事務局長のColin Greenwoodにご連絡ください。